I wish.... 4


 
「・・・・・・?」
 目を覚ますと、見慣れない天井が目に入った。
 人の気配がして顔を横に向けると、枕元に餡が突っ伏して小さな寝息を立てていた。
 額に置かれた、小さく折りたたんだタオルが音も無く落ちたのをそっと拾い上げる。
 先ほどのことを思い出して顔が火照ってくるのを感じたが、考えないようにして部屋の様子を探ろうと、あちこちに目を向ける。
 8畳ほどの部屋に自分の横たわっているベッドと洋服箪笥が一つ、小さな物書き机にスタンドラックが一つ、特に装飾品のないとてもシンプルな部屋だった。
 スタンドラックにかかっているマントに、ここは餡の部屋なのだと思い至る。
 壁には自分が着ていた浴衣がかけられていて、はっとして自分の服を見ると、餡のものなのか薄手でパリっとしたグレーのパジャマだった。
 ずっと気を失っていた自分がどうやって着替えたのかは考えないようにしつつ、再び餡を伺うと、餡はヒーロー服からあせた赤色のTシャツに着替えていた。
 いつからここに居るのだろう。
 物書き机に置かれていた時計を見ると夜中の2時を指していた。
 部屋が明るいのは、看病をしながら餡が寝てしまったからだろう。
 電気が付けっぱなしになっていた。
 キョロキョロしていると、ベッドの端にTシャツとズボンが置かれているが目に付いた。
 もしかして自分用にかな、と菌は思うと、一刻も早くバイキン城へ帰ろうと着替え始めた。
 先ほどまではクラクラしていた頭も、今は随分調子がいい。起き上がってもなんとも無かった。
「う、ん・・・?」
 ベッドの上でごそごそしていると、餡が目を覚ましてしまったようだ。
「あ、・・・バイキンマン?起きても大丈夫なの?」
「い、一刻も早く城へ帰るのだ!」 
「そう・・・・・・。」
 餡は少し寂しそうな顔をしたが、調子の良さそうな菌を見てすぐに顔をほころばせた。
「大丈夫そうだね。良かった。」
「・・・・・・。」
 菌はそれだけで顔が熱くなってくるのを感じ、まともに餡の顔を見れなかった。
「送ろうか?」
「一人で帰れるのだ・・・。」
 そういうと思った、と餡は呟いてクスリと笑った。
「・・・バイキンUFOが下にあるから。」
 そうこうしているうちに着替えの済んだ菌がベッドから下り、部屋を出て行く途中に机に置かれた2枚の短冊が目に付いた。
 結局飾りつけできないままになってしまったのだ。餡の書いた短冊に目を走らせ、赤くなる。
 わざと大振りに顔を背けると、部屋を出ると餡が後ろを付いてきた。
「ひ、一人で帰れるのだ!」
「しーっ。皆が起きちゃうよ!下まで行くだけだから。」
 振り返って抗議する菌をたしなめて、ほらほら、と背中を急かした。
 
 
「本当に大丈夫・・・?」
「大丈夫なのだって言ってるのだ!!」
 真夜中の空気は、昼間とは打って変わってひんやりとしていた。
「バイキンマン。」
 UFOに乗り込もうとすると、餡に呼び止められた。
「・・・さっき言ったこと、本当だからね。」
 菌は思い出して赤面する。
 本当だと言われても何て返していいものか。
 紅い顔で困ったような表情で押し黙り、視線をさ迷わせた。
 そんな菌に餡は優しく微笑むと、菌は目に見えるほどに動揺して慌ててUFOに乗り込んだ。
「あ、ありがと・・・ぅなのだ!!」
 言うと、逃げるように去っていった。
「ありがとう、か。」
 餡は言われた言葉を大切に包んで、心の中にしまった。
 
 
 
 織姫と彦星は、無数にある星の中から、今年も出会えただろうか。
 天の川という星の川にかかる橋を渡って。
 
 見上げた空には、無数の星が輝いていた。
   
 
 
 
 




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ああ、やっと終わったー!って感じでした。何だか長かった。
色々入れすぎだったかな?笑 飯食とか辛→バタコとか、ドキン→食とかw
 
ていうかー、餡はほんっと、菌のことが好きで好きでしょうがないみたいですね。
書いてて恥ずかしいよ!(張本人が何を言うw)
 
菌が最後「ありがとう」とか言ってますが、あれは看病&介抱に対して言ったのであります(笑
 
 
それではそれでは!! 最後までお付き合いくださりありがとうございました!
ストーリー的にはまだまだ序章って感じです。ただの通過点、みたいな(笑)
もっとラブラブにしてやんなきゃね・・・!!(何の決意だ 
 
ココまでお付き合いいただき、ありがとうございました〜〜!
またお会いしましょう〜〜!! 
 
2006.7.7