I wish.... 1


 学校のすぐ近くにある公園の広場。
 敷かれている芝生は萌えるように青く、日増しに強くなってきた日差しを受け止めていた。
 広場のすぐ隣に広がる森からは、蝉の鳴き声が日差しを助長するかのように響いている。
「ありがとう、アンパンマン、食パンマン、カレーパンマン。助かったよ。」
 恰幅のよい中年の男性が、広場の真ん中、3人に向かって人のよい笑顔を見せた。
 3人は男の言葉に笑って頷き、先ほど設置した大きな笹の木を見上げた。
 3メートルほどある大きな笹は、葉も十分に茂っていて強い日差しを和らげ、かすかな風にもサラサラと涼しげな音を響かせている。
 街をあげての七夕祭り、3日前のこと。
 毎年行われているこの祭りに、大きな笹を手配しているのはパン工場だった。
 空を飛べて人並み以上の怪力を有するヒーローにうってつけの仕事である。
 今年も竹林に出向いて笹を見繕い、広場に設置し、後は子供たちと街の人たちの飾りつけと短冊を待つばかりとなった。
「今年も晴れるといいですね。」
 額の汗を手の甲で拭いながら、暑さで白い頬を上気させた食が穏やかに笑った。
 笹を見上げていた餡が振り返った視線の先には、テントを張り、笹を客席の後ろに配置するようにステージを作り、七夕祭りの準備をする街の人たちの姿があった。
 ステージでは祭り当日に行われる予定の、織姫と彦星の演劇出演者と思われる人たちが、背景のパネルやステージの位置、広さなんかを確認しているようだった。
「なに、今年も晴れるさ。」
 男は豪快に笑いながら、手にしていた細長い紙を3人に手渡す。
「君たちの分だよ。是非書いて付けてね。それがないと七夕は始まらないからねぇ。」
 願い事を記す短冊だ。
 今日から祭り当日まで広場のテントや商店街などあらゆる場所で配られ、皆で笹を持って川に流しに行くその直前まで短冊をつるし、飾りつけが行われる。
 毎年、たくさんの短冊とカラフルな飾りつけで、とてもにぎやかな笹が出来上がっていた。
「ありがとうございます。」
「短冊かぁ。何書こうかな。」
「去年は何を書いたっけ?」
 受け取ったカラフルな短冊を前に、3人は談笑した。
「3人とも、祭り当日までよろしく頼むよ。」
 男が手を上げてテントの方へと戻って行く。
 上の方の飾りつけが難しいため、3人は日中の間、祭り当日まで交代で飾り付けを手伝うことになっていた。
「じゃあ、俺は配達があるから後はよろしく。」
「僕も、ジャムおじさんに頼まれていた材料を買いに行ってきます。」
「おう。じゃあ今日は俺が残るよ。またな。」
 辛が残り、食がパン工場へと戻り、餡は商店街へと向かった。
 
 
 ジャムおじさんから渡されたメモを片手に、なじみの粉屋へと向かう。
 商店街は、立ち並ぶ店から漏れる涼しい空気が漂っていて先ほど流した汗が乾き、快適な空間を演出していた。
 あちらこちらに小さな笹が飾りつけられていて、風に舞うたびにキラキラと光を反射している。
 飴屋の前を通り過ぎたとき、無意識にチラと中の様子を伺って軽く溜息を吐き、そんな自分に苦笑した。
 以前、買い物に来た折に偶然にも発見したその姿は、今日は見つけられなかった。
「そんな頻繁にいるはずも無いか。」
 この前会ったのは3日前だったか。
 指折り数えてさらに溜息をついた餡。
 相変わらず無謀な戦いを挑んでくる、といういつものパターンだったが。
 だいたい週に2回くらいのペースで、不意に現れては自分を異常なくらい喜ばせている。
 餡はそんな自分の心情なんてこれっぽっちも分かっていないだろう人を思い浮かべた。
 真っ白くて滑らかな肌、艶やかな黒髪、黒に近い紫色をした瞳、話すたびにチラりと覗く尖った八重歯。
 この前の戦いのときにその白い肌につけてしまったアザは治っただろうか? 
 確かめようにも相手から現れてくれなければなす術の無い今の自分に軽く失意する。
 もっとも場所は知っているから根城まで行ってもいいのだが、祭りの忙しさからその時間も取れないで居た。
「もっと君に会えたらいいのになぁ〜・・・。」
 ボソリと呟いて顔を上げると、何の偶然か、視界の端に移ったその姿に餡は息を呑んだ。
 長い黒髪に白いブラウス、黒いスカート、それは変装したときの姿だった。
 外見を隠しても、その瞳や肌や仕草、雰囲気などで餡にはそれが誰か一目で分かる。
 自分が無意識に探している人物そのものだ。
 先に気づいてこちらを伺っていたらしいその人物は、目が合うとビクっと肩を震わせ逃げるように歩を早めた。
「あ、待って!」
 餡は慌てて後を追う。
「バイキ・・・」
 手を伸ばせば肩に触れるまでに接近したとき、自分の方を向かせたかった相手がくるっと自ら向き直り、餡の口がふさがれた。
「・・・・・・。」
 ここで名前を呼ぶな、とにらみ付けながらバツの悪い表情をしている、その人物は変装で隠されているが菌だった。
 菌はその悪戯から街の人には当然嫌われており、買い物をするときや他用で町に出てくる時はいつも変装していた。
 その服はドキンちゃん所有のもので、ご丁寧に菌用の黒髪のかつらまで用意されている。ドキンちゃんの等身大の着せ替え人形と言うところか。
 細身で整った顔立ちをしている菌はまた、それが文句無く似合っていた。
 自分の口をふさぐ手を優しく掴み、餡は自然に笑みがあふれてくる顔を隠さずに話した。
「やぁ。買い物に来たの?偶然だね。」
 餡の気持ちを知る由もない菌は、やけに上機嫌な餡に不審を覚える。
 菌は向けられる笑顔が直視できなくて、目をそらした。
「な、何か用か?」
「ううん。でも会えて嬉しいなって思って。」
「・・・ばっ、な、何言って・・・。」
 菌が慌てて餡の顔を見ると、餡は掴んだ腕を見ていた。
 先日、自分との戦いで傷を負った腕を見ているのだろう。だが長袖の白いブラウスに阻まれて手触りすらも分からない。
「傷、治った?大丈夫・・・?」
「あ、あんなヘナチョコな攻撃でできた傷なんて全然たいしたことないのだっ!」
「本当?じゃあ良かった。」
 強がりで言ったセリフは意図しない方向で餡に理解されたようだ。本当はまだうっすらと後が残っていて、部分的に押したりすると痛みも残っている。
 心底ホッとしたような表情で、餡は甘く微笑む。
 菌はその顔を凝視したあと、慌てて掴まれた腕を振りほどいた。
 なぜか、身体が熱い。
 餡はその乱暴な動作を気にするでもなく、菌に話す。
「ねぇバイキンマン、短冊に願い事は書いた?」
「短冊?」
 菌の持っている買い物袋から覗く、細長い色画用紙を示して言う。先ほど買い物をしたらくれたものだった。
 菌は話が急に変わったが七夕祭りの短冊のことか、と合点がいく。
「そう。明日は僕が広場にいるから持っておいでよ。笹につけてあげるから。」
「ヤダね!行かないのだっ!行ったとしても自分でつけるのだ!余計なお世話!!」
「あ、バイキ・・・。」
 バイバイキン!と小さく言うと、菌は逃げるようにしてその場を去っていってしまった。
 やれやれと溜息を吐く餡の表情は、それでも明るいものだった。
 
 
 
 




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あわわわわ、えーーと、気づいた方居ますかね?w
分かった人はきっと同士です(笑)
や、入れるつもりは無かったけどなんか突然出てきましたw アハw
 
笹は現在では汚染の原因になるから、良い子の皆は川に捨てちゃあダメですよ!(><)
そこんとこ頼みます!
 
そしてストーリィ。ヤケに長くなったし。
せっかくなので3つに分けてみました♪
作中と同じように、アップも3日前から1日ごとにします!
ウホ!リアルタイム連動企画!!
 
そして・・・触れておくべきでしょうかね?女装菌に・・・。
いや別にね、特にね、女装菌が好きなわけではないんだけど(笑)
そして同じネタですね!!商店街でバッタリ!!(笑)自分で笑っちゃうよ、笑っちゃうよ!
正直なところ、菌の女装時の服装に行き詰ってます。
こんな服にして!!という要望があれば大歓迎ですよ! 貧困な発想しかもてない私に教えてやろう!って方居ましたらも〜、是非に!(><*)
ただし、フツウにお買い物ができる格好にしてあげてくださいね・・・笑
 
さてさて、続きも宜しくお願いします。!
ココまで読んで頂きありがと〜ございます!


2006.7.5