ホワイトスターの軌跡


注:この話は本編と微妙に繋がっています。(が、フツーに読めるようにしてありますw)
  また、餡と菌はすでに出来上がっている状態です!(甘いですゲロ甘です・・・汗)
  ご了承の上、読まれる方はレッツスクロ〜〜ル!!↓

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「じゃあバタコさん、僕も菌を送ってきます。」
 パン工場で毎年開かれるクリスマスパーティーに、餡、食、辛はもちろん、この秋からパン工場に住まうことになったメロンパンナにクリームパンダ、その姉のロールパンナ、更に今年は菌とドキンちゃん、飯とこむすびも加わってかなり賑やかな時間となった。
 日の暮れるより前から始まったパーティーは大盛り上がりで、夜もとっぷり暮れた頃にまだ幼いメロンとクリームとこむすびを寝かしつけ、散らかったリビングを大まかに片付けたところで、もうすぐ日付を超えそうな時間になっていた。
 餡の言葉に、バタコは片付けていた手元のお皿を一旦置くと、顔を上げた。
「あら、バイキンマン帰っちゃうの?部屋なら餡の部屋が空いてるじゃない?ドキンちゃんは泊まっていくって言ってるわよ。」
「っ!お、俺様は家に帰るのだ・・・!」
「あらそう?」
 さらりと際どいセリフを言ったバタコが、菌の反応にクスクスと笑って食べ切れずに残ったケーキと料理を手早く包んだ。
 ケーキや料理は、菌が朝からパン工場を訪れてバタコを手伝って作ったものだった。
「バイキンマン、これ。パーティーの残り。バイキンマンてお料理上手ね。美味しかったわ。」
 バタコは菌に、小さな包みを手渡した。
「あ、ありがとう・・・。」
 素直に受け取ると、別の部屋から手荷物を持ってきた飯が隣に並ぶ。
「バタコさん、今日はご馳走様でした。こむすびまでお世話になって・・・。」
「あらやだおむすびくん、いつものことじゃない!」
 バタコは飯に向かってカラカラと笑って
「あ、ほら、あんたたちも持って帰りなさいよ!」
 手にしていたタッパを、コートを着込んでいた食に押し付けるように渡した。
「あ、うん。ありがとう。」
 食は2人分の朝食になりそうな料理をさっと詰めると
「じゃあバタコさん、また明日。」
 食のその言葉が合図のように、ぞろぞろと玄関へ向かう。
「ええ、また明日ね。」
「あ、僕らも行くよ、バイキンマン。」
「ロールとドキンちゃんによろしくな。」
「伝えておくわ。餡、帰ってくるの?」
 バタコが餡に向き直って尋ねると、餡は菌をチラリと見て、
「うーん、バイキンマンが家に入れてくれなかったら帰ってきます。」
「・・・エっ?!」
「ぶ、何だよそれ・・・!」
 思わず食が噴きだした。
「だって、バイキンマン家に入れてくれない時あるんだもーん。」
「や、その、それは・・・!」
 笑いながら口を尖らせて言う餡と、自身に視線が集中するのを感じて菌はしどろもどろになる。
「まぁまぁ、バイキンマン困ってるじゃないですか、2人とも?」
 飯がクスクスと笑いながら、顔を真っ赤にして口をパクパクとさせる菌に救いを出した。
「一応マント持って行きます。帰りは飛んで帰ってきます。」
「うふふ。わかったわ。気をつけてね。」
「さむっ!」
 ガチャリとドアを開けると夜の冷気が温まった室内に入り込んで、菌は首をすくめた。
 薄く曇った空に、吐く息が白い。
「気をつけてねー!おやすみなさい!」
「おやすみー!」
 バタコに手を振られ、パン工場を後にした。
 
 
 
 4人で並んでしばらく歩く。
「バイキンマン、今はジャムおじさんのところで手伝ってるんですね。」
「うん。」
 優しい物言いの飯に、菌の言葉もいつもと違って素直になる。
「ねぇおむすびまん、今度はいつまでこっちに居られるの?」
 今日、パーティーの始まる少し前に帰ってきた飯に会うのは約2ヶ月ぶりだったのだ。
「今回は年明けまで居ますよ。この時期は何処に行っても忙しそうで。パン工場のお手伝いをさせてもらいますよ。」
「そうなんだ。・・・良かったね、食。」
「・・・・・・・・・。」
 隣に居た食をひじで小突いてコソコソと言うと、むすっとした顔で小突き返されて、餡が笑った。
「餡も、元気になって良かったですね。」
「うん。おかげさまで。腕ももうフツーに動くようになったし。・・・冷えるとキシキシ言う感じするけど。」
 餡は、重症を負っていた右腕を飯にも見えるように動かしながら、怪我の話題に目を伏せた菌の背をポンポンと軽く叩いた。
「無理は禁物ですよ。」
「うん。大丈夫。」
 薄い雲の途切れた間から星が煌いているのを眺めながらしばらく歩いていると、トースター山へ向かう道と、町外れのバイキン城まで続く道との分岐まで来た。
「じゃあ、また明日だね、食。」
「ああ。またな、餡。」
「おやすみなさい、餡、バイキンマン、気をつけて。」
「おやすみなさい・・・!」
 向かい合って手を振って別れた。
 
 
 
 
 
「うー、さぶい・・・。」
 夜も深くなってきて、外気温はさらに低くなってきているようだった。
「今年は雪降らなかったねぇ。」
 餡が、着ていた赤いジャンパーの前をぎゅっと両手で合わせて首をすくめる仕草をしながら、空を見上げた。大きく首もとの空いたジャンパーは見た目にも寒そうで、菌は戸惑った末に持っていたバッグの中から包みを取り出した。
「・・・餡。」
「ん・・・?」
 呼ばれて目線を戻すと、俯いて包みを差し出す菌の姿があった。
「ク、クリスマスプレゼントっ!」
「えっ!!!」
 驚きつつも餡は包みを受け取る。
 カサリ、と包み紙の音がして、餡は満面の笑みを浮かべた。
「ねぇ、あけてもいい?」
 コクリと頷く菌の様子に、餡は嬉々として包装を解くと、中から出てきたのはマフラーだった。
 マフラーは長めで、オレンジにグリーンや赤で模様が入っている。
「ありがとう、バイキンマン!」
「わっ」
 餡は早速首に巻きつけ、菌をぐいと引き寄せるとその首にもマフラーを巻きつけた。
「あ、餡ッ!」
「あったかいね。これ、バイキンマンが作ったの?」
 そのまま手をとり、ぎゅっと握って歩く。
「う、ん。」
 引っ張られて導かれるようにして歩き出した菌が、マフラーに顔をうずめるようにして頷いた。
「ふふふ」
「・・・?」
「・・・うれしい。」
「・・・・・・・・・。」
 繋いだ手から餡の手の温かさが伝わって菌の冷たい手を温め、腕を絡めるようにして寄り添いながら歩いた。
 町の中心にある広場の噴水へと辿り着く。
 そこにはつい先日設置された大きなクリスマスツリーがライトアップされていた。
「綺麗だね。」
 自然に歩みが遅くなり、2人は立ち止まった。
 色とりどりのミラーボールや天使の飾りで彩られたツリーは、カラフルな電飾をも携えてキラキラと輝いていた。
 町はすでに眠っており家々からもれる明かりもなく、その輝きはいっそう煌びやかだ。
「バイキンマン・・・」
 ツリーを見ていた餡が身体を向き合わせたと感じると、顔が近づく。
 餡と目が合い、その瞳に映る電飾の煌きに一瞬気を奪われるが、菌は慌てて目を閉じた。
 そんな菌の様子をみて、餡はそっと笑うと、菌の両肩に腕を預けると両手を後ろに回した。
「・・・?」
 マフラーの下でなにやらゴソゴソと動く餡の手と、目を閉じたものの重なる気配のない唇に、菌が不思議に思って瞳を開くと狙ったように、ちゅ、とキスされる。
「っ・・・!」
「メリークリスマス、バイキンマン。」
「・・・・・・え?」
 菌の両肩に置いていた餡の肘が退くと、菌の胸元で何か光った。
「これ・・・!」
 手にとって見ると、それはシルバーの三日月に星が3つ連なったペンダントだった。
 星の形に埋め込まれた少し曇ったように見える白い石が、ゆらりと揺れて光を受け、七色に輝いている。
 その色にしばらく見とれていた菌は顔を上げると、
「あ、ありがとう、なのだ・・・。」
素直に紡がれるその言葉に、餡が頷いた。
「あ・・・、見て、バイキンマン、雪だ!」
 見上げると、黒い空から、白くて小さな花びらのような雪が優しく降り注ぐ。
「積もるかな。」
 呟いて、餡は再び菌の手をとるとバイキン城への道のりを歩き出した。
 
 
 
 
 
 
 
雪が地面に降り立ちて儚く散り、その名残のように影を残す。
 
菌の胸元でも、白く光る星が、雪のように揺れて輝いていた。
 
 
 
 
 
 
終  
 
 
 
 
 
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直線茶さま、柚木ひこさまに捧げます・・・!(多謝!)
 
 
実を言うとこの話、予定では本編に入れたい内容だったんですが、本編待ってたら間に合わネェ!本編まだ残暑だもんよ!!!(笑)て感じだったので、クリスマスバージョンとして先に書いてしまいました。
本編書くときに加筆修正をもしかしたらするかもしれません。
ま、コレはコレで残そうと思っておりますが♪
 
 
そして、このお話を、せいやァ!!(気合)と、書く萌えが発生したのは、素敵絵茶のおかげでございます!!
念願の餡菌絵茶で僭越ながらネタ振りさせていただくことになり、クリスマスネタアップできたらいいなぁ、なんて思っていた私は、頭の中に思い浮かんでいた光景をネタ振りさせていただきました・・・!!うわ、俺様卑怯モノ!(笑)と思いつつ(笑)
茶さん、ひこさん、ありがとうございました!!!
このSSは本当に本当に素敵絵の賜物でございます!!!
 
そんな素敵絵はこちら
 
絵茶ログとしてもアップさせていただきますので、よろしければそちらもご覧ください♪
 
 
それから特筆すべきは、マフラーです・・・!!悶
このシーン、ひこさん宅にあるイラストで、餡と菌が一つマフラーに包まっているという素敵な萌絵があり、クリスマスネタを考えている時点でこのシーンを絶対に入れてやる・・・!!!なんて思いながら書いていましたww
ひこしゃんには重ね重ね、感謝ですよ・・・!素敵な萌えをいつもあざっすv ラブv
 
 
さて、このSS、クリスマスネタと言えど本編の一部。しっかり布石なんぞ打ってみましたv
打ったものの上手く使えるかどうかですがね!笑
 
ここまでお読みいただきありがとうございました!
 
 
メリークリスマス!
そして少し早いですが、皆様良いお年をお迎えくださいませv
 
 
紅月 渉
2006.12.22